メディカル・モール
- 2020/02/23
- 22:44
女性新患者さんを受け入れ、それを元に、官能小説を掲載します。
官能小説 『メディカル・モール』
都心のオフィスビルが、多くある街に勤める女性会社員の、鈴木 愛 は、今年でもう33歳になった。恋愛経験も無い訳では無いが、何せ仕事が忙しくて、いつの間にか恋人も無く、三十路を超えてしまった。自宅マンションと、都心の勤務先へ通勤するだけの生活を、もう何年も続けている。所謂キャリアウーマンで、生活にゆとり等、考えられないハードワークである。それでも、仕事に遣り甲斐を感じ、地位も得てそれなりの収入が得られている。満員の通勤電車に揺られて、押し合いへし合い。近年、通勤地獄は更に酷くなっている。直通運転が増えて、通勤客も増え、更に遅延、計画運休なども増え、益々体力、気力を奪っていく。でも、悲しいかな、勤勉こそ私の取柄とばかりに、彼女は会社を休む事をしない。
今日も、お化粧もそこそこに、朝早く家を出て、満員電車に揺られ、会社では激務に堪える。お馬鹿な部下と、無理難題を押し付ける上司と、男性社員の横柄さに、ストレスを大きく感じている。キャリアウーマンの鈴木 愛。
そんな彼女にも、すこしだけ楽しみがあった。朝の通勤時は、流石に頭がボーっとしていて、只管、つり革に掴まり、痴漢から身を守るだけであるが、夜の帰宅時の通勤電車の中では、仕事が終わりホッとして、スマホで好きな事柄を、検索して記事やYouTubeを楽しんでいる。目が疲れて、ショボショボするのだが、これだけは止められない。
今日も、帰路の通勤電車内で、スマホを弄って、ニュースなどを閲覧する。巷では、新型コロナウィルスの話題ばかりだ。用心の良い彼女は、インフルエンザ予防の為に、マスクは必需品とばかりに、事前に一箱買っておいたので、暫くは大丈夫そうだ。ピンクのお洒落な使い捨てマスクだで、一箱50枚入りだ。既に、ドラッグストアでは、品切れ状態。あっても、何倍もの値段で売っている。抜かりのない鈴木愛であった。
お洒落なケース入りのスマホに、ピンクのイヤホンを挿して、お気に入りの音楽を、YouTubeで聴く。でも、タイトなストッキングに、立ちっぱなしで、脚はもうパンパン。電車内の広告には、美容エステの宣伝があって、横目で見ながら、一度は行ってみたいな~と思っている。如何にも、都会にいそうな、ブランド・スーツ姿の鈴木愛。バッグもウオッチも、シューズも、ブランドものだ。少し、髪が長めで、美形の彼女は、周囲の男性の目を引いている。ヘアーサロンは、高めの所で毎月カットして貰っている。経済的には、少しも困らない。時間が無いのが、悩みだ。お陰で、習い事のチケットは、随分と無駄にしてしまった。
今日も、鈴木愛は、会社帰りの電車内で、スマホ画面でニュースを見たり、好きな音楽を楽しむ。そして、興味のある語句を打ち込んで、検索を行う。電車の広告のエステティックサロンを検索する。『いいわね。美容対策しなくっちゃね..。海外旅行もしたいなあ。リゾートがいいな。あ、でも今は駄目かしら。コンサートも行きたいけど、やっぱり今は、止めておいた方がいいわね。どうせ、中止になるでしょうし。』 あれこれ考えながら、サイトを検索して行く。
『エステへ行きたいけど、パソコンを毎日使うから、肩が凝るわ。マッサージ屋さんも、いいかしら。でも、ちょっとお高いわね。そうそう、歯医者さんの定期検診へ行ってないわ。ハガキが来てたけど。眼科も行きたいわ。コンタクト合わなくなってるし。そうそう、皮膚科で、クリーム貰いたいわね。湿疹が出来てかゆ~い。首のシコリは、耳鼻咽喉科へ行けばいいのかしら。内科でいいのかなあ?ただの凝りかしら?ちょっと心配だわ。そうそう、便秘で切痔っぽくなってるし~。生理痛酷いし...夜がよく眠れないし~、睡眠導入剤欲しいわね。内科?心療内科? ちょっとよく分からないわね。』 そうあれこれ考えながら、鈴木愛は、スマホで検索を行う。
やがて電車は、乗換駅に着いた。ドドドドドドドドドと、多くの乗客が降りる。我先に、エスカレータへ突進。割り込まれたり、肩をぶつけられたりしながら、ピッと乗り換えの改札を通過する。横では、キンコンと赤いランプを光らせて、ゲートに阻まれ、後ろの列に、ストレスを与える輩がいる。
愛は、乗り継ぎ電車に無事に乗車出来た。直通電車もあるのだけど、時間帯によって乗り換える事がある。ホッとしながら、又スマホを弄る。『ええと、何だっけ? あ、そうそう、クリニックよね。』 思い出しながら、再び電車に揺られながら、スマホ画面に視線を遣る。電車は、コトン、キキキー、コトンコトンと、遅延無く進む。時々、カーブで揺れて、つり革をしっかり掴む。車窓から見えるビルも、やや低くなり、明るさも減少して来た。カンカンカンカンカンと踏み切りが遠ざかる。来年には、高架になり、踏切も無くなる。もう直ぐ駅に着く。スマホ画面には、アドバタイズメント(広告)が邪魔をする。『イラつくわね。あ、間違ってタップしちゃったじゃない。もう。あら、Hなサイトね。危ないわ。戻れ!』 多分、画面は戻ったと思われるのだが、ちょっと変。『あれ?変になっちゃった。腹立つわね。訳分んないわ。』 愛は、またスマホを弄る。『あ、もうすぐ着くわ。』
慌てて、スマホをバッグにしまい、降りる準備をする。『ああ、着いたわね。』ドアが開いて、結構人が降りた。『もっと遠い人は、これからやっと座れるのね。』そう思いながら、改札をピッと出た。冷たい風が頬に当たる。『うわあ、やっぱり外は寒いわね。早く帰ろう。』 コツコツと靴音を響かせて、足早に自宅へと急ぐ。途中、コンビニへ寄って軽めの晩御飯を買う。『明日も、仕事が山積みね。早く帰って、食べて寝よう。』 そうして、鈴木愛のその日が終わる。
そして、また次の日の仕事が終わり、帰りの電車で、スマホを弄る。プシュー、ドアが閉まり、電車は再び発車する。『エステティックサロンか~。行きたいなあ...』 何件かを閲覧する。愛の友達は、みんな結婚してしまい、子育てに忙しく、最近は会っていない。『前は、友達と一緒に、遊びに行ったのに、最近行かなくなったわねえ。』 愛は、ふとそんな事を思い出し、これは何かストレス解消しなくちゃねと感じている。
『あれ、これは何かしら?』 愛は、幾つかのエステティックサロンのサイトを見ていると、関連した女性用の広告が、目につきました。『”メディカル・モール”って、何かしら?』 愛は、画面をタップして、内容をチェックします。そこには、複合施設のように、幾つもの個人医院の集合体が紹介されている。『あら、色んなクリニックが、一箇所に集まった所なのね。歯科、眼科、耳鼻咽喉科、内科、心療内科、婦人科なんかが有るわ~。これなら、総合病院へ行かなくても、一つのビルで、クリニックを、巡ればいいのね。これは便利だわね。』 画面には、いくつものメディカル・モールが、並んでいる。良さそうな所を開いて、内容を見てみる。『何処も、綺麗でよさそうね。でも、ちょっと遠いかしら。会社の近くか、通勤の途中に無いかしら?』 愛は、更に幾つかのモールの紹介の中に有る地図を開いて調べてみる。『これは、近いわね。あー、でも時間が早くしまってしまうわね。』 当然、世の中はそんなに都合よく出来ていない。会社を休んだり、早退したり、午前中の半休を取るしかないのだ。
『本当は、時間が合えば、ここが近くていいんだけどなあ。最初に歯科へ行って、次に眼科へ行って、そうだ、皮膚科へも行って、耳鼻咽喉科へ行って、婦人科は、怖いからパスで、そして、内科でもお薬を処方して貰って、同じビルの薬局へ行けば、全部済んでしまうわ。あー、でも結構時間は掛かるわよね。やっぱり、会社帰りなんて、行ける訳ないわ。』
愛は、そんな事を頭の中で考えながら、スマホ画面と睨めっこで、通勤帰りの電車の時間を潰す。カタンカタンと、リズムを刻んで電車は進む。
愛は、更に次々と検索して行く。すると、『あれ、これは何かしら? サイバーメディカル・モール?』 気になったので、タップしてサイトを確認する。『これは...メディカル・モールみたいねえ。サイバーって言うのだから、電子上の? でも、エステティックサロン的な感じもするわ。メディカル・モール的なエステティックサロンなのかしら? 何だか分からないわ。医院なの?エステなの?』
紹介画面には、エステティックサロンの椅子があって、そこでオイルマッサージとか、耳掻き、お臍のクリーンアップ、歯のホワイトニング、お灸とかが紹介されています。『ああ、これは名前だけメディカル・モールってあるけど、内容は、エステティックサロンよね。でも、気持ちよさそうね~。マッサージかあ...耳掻きなんて、子供の時以来、遣って貰った事無いなあ。お臍の手入れなんか、最近していないわね。忙しいし、彼と別れてもう何年になるのかしら...。ああ、ダメダメ、詰まらない事思い出しそうだわ。』
ストレスの溜まった愛には、何故か耳掻きに、興味が出て来ました。
『ちょっとこの変わったサイトを、もっと見てみようッと。』 愛はスマホ画面をタップして、内容を詳しくチェックします。『あら、今ならお試しキャンペーンを遣ってるみたいね。一度だけ、全部遣っても無料になってるわ。いいわねー、これは、魅力的だよねえ。よーし、お試ししてみようかしら。いえ、ちょっとまって。うまい話には、大抵落とし穴があるわよねえ。よく読んでみようッと。』
某女子大学卒業の鈴木愛は、慎重にサイト内を隈なく読み始めた。
『う~ん、そうね。特に怪しい事は無さそうね。無理矢理高額チケットを買わされるなんて事も、無さそうだわ。体験者の声も、まあまあかしら。それに、通勤経路の駅の近くなのね。夕方も結構遅くまで遣ってるわ。内容も色々遣って呉れるみたいだわ。これなら、会社帰りに立ち寄れるかしらね。』 愛は、頭の中で、経路と時間を計算し始めました。『会社を早く帰れそうな曜日は、そうだ、来週の木曜日なら、確か仕事が一段落して、早めに帰れるかも知れないわ。』 キャリアウーマンの鈴木愛は、プロジェクトマネージャーで、グループを取り仕切っている為、定時にはそう簡単に帰れないのだった。愛は、頭の中で、来週の木曜日の、業務終了後からの行動計画を立て始めた。『ええと、六時に帰れたとして、駅へ15分後、そこから3駅、何時頃になるかしら?』 タイムラインを作る為、スマホの乗換案内で検索する。『改札を出てから、何分だっけ?』 クルクルマップを見て、徒歩何分かを調べる。『徒歩10分くらいね。そして、色々遣って貰って、一、二時間かしら。それで九時前には、帰れそうね。これなら、残業して帰る時間帯と同じね。行けそうよ。』 すっかりその気になった鈴木愛は、少し楽しみになって来ました。『行ってみて、良かったら、チケットか何かを買って、通えばいいよね。ストレス発散にもなるし、少しくらい投資しても構わないわ。』
その時、電車のドアがプシューっと開いた。『あれ?ここ何処の駅かしら?あっ、降りなきゃ!』 スマホであれこれ調べている内に、今日乗った帰りの通勤電車は、直通だったので、もういつの間にか、自分の降りる駅に到着していたのでした。愛は、改札を出ると、いつもの様に、コンビニへ立ち寄ってから、帰宅して行きました。
官能小説 『メディカル・モール』
都心のオフィスビルが、多くある街に勤める女性会社員の、鈴木 愛 は、今年でもう33歳になった。恋愛経験も無い訳では無いが、何せ仕事が忙しくて、いつの間にか恋人も無く、三十路を超えてしまった。自宅マンションと、都心の勤務先へ通勤するだけの生活を、もう何年も続けている。所謂キャリアウーマンで、生活にゆとり等、考えられないハードワークである。それでも、仕事に遣り甲斐を感じ、地位も得てそれなりの収入が得られている。満員の通勤電車に揺られて、押し合いへし合い。近年、通勤地獄は更に酷くなっている。直通運転が増えて、通勤客も増え、更に遅延、計画運休なども増え、益々体力、気力を奪っていく。でも、悲しいかな、勤勉こそ私の取柄とばかりに、彼女は会社を休む事をしない。
今日も、お化粧もそこそこに、朝早く家を出て、満員電車に揺られ、会社では激務に堪える。お馬鹿な部下と、無理難題を押し付ける上司と、男性社員の横柄さに、ストレスを大きく感じている。キャリアウーマンの鈴木 愛。
そんな彼女にも、すこしだけ楽しみがあった。朝の通勤時は、流石に頭がボーっとしていて、只管、つり革に掴まり、痴漢から身を守るだけであるが、夜の帰宅時の通勤電車の中では、仕事が終わりホッとして、スマホで好きな事柄を、検索して記事やYouTubeを楽しんでいる。目が疲れて、ショボショボするのだが、これだけは止められない。
今日も、帰路の通勤電車内で、スマホを弄って、ニュースなどを閲覧する。巷では、新型コロナウィルスの話題ばかりだ。用心の良い彼女は、インフルエンザ予防の為に、マスクは必需品とばかりに、事前に一箱買っておいたので、暫くは大丈夫そうだ。ピンクのお洒落な使い捨てマスクだで、一箱50枚入りだ。既に、ドラッグストアでは、品切れ状態。あっても、何倍もの値段で売っている。抜かりのない鈴木愛であった。
お洒落なケース入りのスマホに、ピンクのイヤホンを挿して、お気に入りの音楽を、YouTubeで聴く。でも、タイトなストッキングに、立ちっぱなしで、脚はもうパンパン。電車内の広告には、美容エステの宣伝があって、横目で見ながら、一度は行ってみたいな~と思っている。如何にも、都会にいそうな、ブランド・スーツ姿の鈴木愛。バッグもウオッチも、シューズも、ブランドものだ。少し、髪が長めで、美形の彼女は、周囲の男性の目を引いている。ヘアーサロンは、高めの所で毎月カットして貰っている。経済的には、少しも困らない。時間が無いのが、悩みだ。お陰で、習い事のチケットは、随分と無駄にしてしまった。
今日も、鈴木愛は、会社帰りの電車内で、スマホ画面でニュースを見たり、好きな音楽を楽しむ。そして、興味のある語句を打ち込んで、検索を行う。電車の広告のエステティックサロンを検索する。『いいわね。美容対策しなくっちゃね..。海外旅行もしたいなあ。リゾートがいいな。あ、でも今は駄目かしら。コンサートも行きたいけど、やっぱり今は、止めておいた方がいいわね。どうせ、中止になるでしょうし。』 あれこれ考えながら、サイトを検索して行く。
『エステへ行きたいけど、パソコンを毎日使うから、肩が凝るわ。マッサージ屋さんも、いいかしら。でも、ちょっとお高いわね。そうそう、歯医者さんの定期検診へ行ってないわ。ハガキが来てたけど。眼科も行きたいわ。コンタクト合わなくなってるし。そうそう、皮膚科で、クリーム貰いたいわね。湿疹が出来てかゆ~い。首のシコリは、耳鼻咽喉科へ行けばいいのかしら。内科でいいのかなあ?ただの凝りかしら?ちょっと心配だわ。そうそう、便秘で切痔っぽくなってるし~。生理痛酷いし...夜がよく眠れないし~、睡眠導入剤欲しいわね。内科?心療内科? ちょっとよく分からないわね。』 そうあれこれ考えながら、鈴木愛は、スマホで検索を行う。
やがて電車は、乗換駅に着いた。ドドドドドドドドドと、多くの乗客が降りる。我先に、エスカレータへ突進。割り込まれたり、肩をぶつけられたりしながら、ピッと乗り換えの改札を通過する。横では、キンコンと赤いランプを光らせて、ゲートに阻まれ、後ろの列に、ストレスを与える輩がいる。
愛は、乗り継ぎ電車に無事に乗車出来た。直通電車もあるのだけど、時間帯によって乗り換える事がある。ホッとしながら、又スマホを弄る。『ええと、何だっけ? あ、そうそう、クリニックよね。』 思い出しながら、再び電車に揺られながら、スマホ画面に視線を遣る。電車は、コトン、キキキー、コトンコトンと、遅延無く進む。時々、カーブで揺れて、つり革をしっかり掴む。車窓から見えるビルも、やや低くなり、明るさも減少して来た。カンカンカンカンカンと踏み切りが遠ざかる。来年には、高架になり、踏切も無くなる。もう直ぐ駅に着く。スマホ画面には、アドバタイズメント(広告)が邪魔をする。『イラつくわね。あ、間違ってタップしちゃったじゃない。もう。あら、Hなサイトね。危ないわ。戻れ!』 多分、画面は戻ったと思われるのだが、ちょっと変。『あれ?変になっちゃった。腹立つわね。訳分んないわ。』 愛は、またスマホを弄る。『あ、もうすぐ着くわ。』
慌てて、スマホをバッグにしまい、降りる準備をする。『ああ、着いたわね。』ドアが開いて、結構人が降りた。『もっと遠い人は、これからやっと座れるのね。』そう思いながら、改札をピッと出た。冷たい風が頬に当たる。『うわあ、やっぱり外は寒いわね。早く帰ろう。』 コツコツと靴音を響かせて、足早に自宅へと急ぐ。途中、コンビニへ寄って軽めの晩御飯を買う。『明日も、仕事が山積みね。早く帰って、食べて寝よう。』 そうして、鈴木愛のその日が終わる。
そして、また次の日の仕事が終わり、帰りの電車で、スマホを弄る。プシュー、ドアが閉まり、電車は再び発車する。『エステティックサロンか~。行きたいなあ...』 何件かを閲覧する。愛の友達は、みんな結婚してしまい、子育てに忙しく、最近は会っていない。『前は、友達と一緒に、遊びに行ったのに、最近行かなくなったわねえ。』 愛は、ふとそんな事を思い出し、これは何かストレス解消しなくちゃねと感じている。
『あれ、これは何かしら?』 愛は、幾つかのエステティックサロンのサイトを見ていると、関連した女性用の広告が、目につきました。『”メディカル・モール”って、何かしら?』 愛は、画面をタップして、内容をチェックします。そこには、複合施設のように、幾つもの個人医院の集合体が紹介されている。『あら、色んなクリニックが、一箇所に集まった所なのね。歯科、眼科、耳鼻咽喉科、内科、心療内科、婦人科なんかが有るわ~。これなら、総合病院へ行かなくても、一つのビルで、クリニックを、巡ればいいのね。これは便利だわね。』 画面には、いくつものメディカル・モールが、並んでいる。良さそうな所を開いて、内容を見てみる。『何処も、綺麗でよさそうね。でも、ちょっと遠いかしら。会社の近くか、通勤の途中に無いかしら?』 愛は、更に幾つかのモールの紹介の中に有る地図を開いて調べてみる。『これは、近いわね。あー、でも時間が早くしまってしまうわね。』 当然、世の中はそんなに都合よく出来ていない。会社を休んだり、早退したり、午前中の半休を取るしかないのだ。
『本当は、時間が合えば、ここが近くていいんだけどなあ。最初に歯科へ行って、次に眼科へ行って、そうだ、皮膚科へも行って、耳鼻咽喉科へ行って、婦人科は、怖いからパスで、そして、内科でもお薬を処方して貰って、同じビルの薬局へ行けば、全部済んでしまうわ。あー、でも結構時間は掛かるわよね。やっぱり、会社帰りなんて、行ける訳ないわ。』
愛は、そんな事を頭の中で考えながら、スマホ画面と睨めっこで、通勤帰りの電車の時間を潰す。カタンカタンと、リズムを刻んで電車は進む。
愛は、更に次々と検索して行く。すると、『あれ、これは何かしら? サイバーメディカル・モール?』 気になったので、タップしてサイトを確認する。『これは...メディカル・モールみたいねえ。サイバーって言うのだから、電子上の? でも、エステティックサロン的な感じもするわ。メディカル・モール的なエステティックサロンなのかしら? 何だか分からないわ。医院なの?エステなの?』
紹介画面には、エステティックサロンの椅子があって、そこでオイルマッサージとか、耳掻き、お臍のクリーンアップ、歯のホワイトニング、お灸とかが紹介されています。『ああ、これは名前だけメディカル・モールってあるけど、内容は、エステティックサロンよね。でも、気持ちよさそうね~。マッサージかあ...耳掻きなんて、子供の時以来、遣って貰った事無いなあ。お臍の手入れなんか、最近していないわね。忙しいし、彼と別れてもう何年になるのかしら...。ああ、ダメダメ、詰まらない事思い出しそうだわ。』
ストレスの溜まった愛には、何故か耳掻きに、興味が出て来ました。
『ちょっとこの変わったサイトを、もっと見てみようッと。』 愛はスマホ画面をタップして、内容を詳しくチェックします。『あら、今ならお試しキャンペーンを遣ってるみたいね。一度だけ、全部遣っても無料になってるわ。いいわねー、これは、魅力的だよねえ。よーし、お試ししてみようかしら。いえ、ちょっとまって。うまい話には、大抵落とし穴があるわよねえ。よく読んでみようッと。』
某女子大学卒業の鈴木愛は、慎重にサイト内を隈なく読み始めた。
『う~ん、そうね。特に怪しい事は無さそうね。無理矢理高額チケットを買わされるなんて事も、無さそうだわ。体験者の声も、まあまあかしら。それに、通勤経路の駅の近くなのね。夕方も結構遅くまで遣ってるわ。内容も色々遣って呉れるみたいだわ。これなら、会社帰りに立ち寄れるかしらね。』 愛は、頭の中で、経路と時間を計算し始めました。『会社を早く帰れそうな曜日は、そうだ、来週の木曜日なら、確か仕事が一段落して、早めに帰れるかも知れないわ。』 キャリアウーマンの鈴木愛は、プロジェクトマネージャーで、グループを取り仕切っている為、定時にはそう簡単に帰れないのだった。愛は、頭の中で、来週の木曜日の、業務終了後からの行動計画を立て始めた。『ええと、六時に帰れたとして、駅へ15分後、そこから3駅、何時頃になるかしら?』 タイムラインを作る為、スマホの乗換案内で検索する。『改札を出てから、何分だっけ?』 クルクルマップを見て、徒歩何分かを調べる。『徒歩10分くらいね。そして、色々遣って貰って、一、二時間かしら。それで九時前には、帰れそうね。これなら、残業して帰る時間帯と同じね。行けそうよ。』 すっかりその気になった鈴木愛は、少し楽しみになって来ました。『行ってみて、良かったら、チケットか何かを買って、通えばいいよね。ストレス発散にもなるし、少しくらい投資しても構わないわ。』
その時、電車のドアがプシューっと開いた。『あれ?ここ何処の駅かしら?あっ、降りなきゃ!』 スマホであれこれ調べている内に、今日乗った帰りの通勤電車は、直通だったので、もういつの間にか、自分の降りる駅に到着していたのでした。愛は、改札を出ると、いつもの様に、コンビニへ立ち寄ってから、帰宅して行きました。