「暫くその姿勢でいて下さいね。お尻は、見た処問題なさそうですね。痔疾等も無さそうです。それでは次に、検温しましょう。動かないでいて下さいね。」ドクターはそう言うと、直腸温度計にゼリーを塗ります。
女性患者さんは、異常無しと聞いて安心します。でも検温?って何の事? 直腸の温度を計られるとは知りません。これから、体の深部温度を計測されます。
「検温しますが、腋下では無く、直腸温を測りますよ。ちょっと冷たいですが、辛抱して下さい。」
そう言われても女性患者さんには、何の事か分かりません。背後でピッという電子音が聞こえます。
電子音に反応して、肛門がヒクヒクと動きます。
直腸へ体温計を挿し込んで、体の深部温度を計測します。腋下や舌下に比べ、通常は高く出ます。直腸を傷付けないように、ゼリーがたっぷり塗布されます。
「お尻の温度を測りますね。楽にして、ゆっくり息をして下さい。吸ってー、吐いてー、ゆっくりー。」
女性患者さんは、お尻の温度って?何~? と不思議に思いますが、ゆっくり息をして下さいと言われたので、その通りに従い、息をゆっくりします。
「あっ、嫌っ?!」 ドクターが、指先で女性患者さんの肛門を左右に開くと、女性患者さんは、小さく声を上げます。肛門がすぼまるのが見えます。「はい、楽にして~、ゆっくり息をしていて下さいね~。」 ドクターは、タイミングを計り、女性患者さんの肛門へ、体温計の先端を当てます。「はい、ちょっと御免なさいね~。」
「あっ?!」女性患者さんは、小さな声をたてます。
冷たいものが何かお尻の穴へ入って来ます。
「はい、動かないでねー。大丈夫ですよ~。そのままでいて下さいね~。」後ろから、ドクターの声が聞こえて来ます。
体温計が、肛門へ挿し込まれました。角度に注意して、直腸壁を傷付けないように挿し込みます。無理に挿し込んではいけません。正しい角度で挿し込まれると、スルッと簡単に入ります。奥までしっかり挿入しておきます。
体温計は、女性患者さんの肛門へプスリと突き挿されました。スーッと奥まで入れられます。
「暫くお待ちください。今、直腸の温度を計測中ですよ~。」女性患者さんの深部体温が計測されます。
温度計のデジタルの数字が、ゆっくり上昇して行くのが見えます。
「動かないでね~。危ないですよ~。」
体温計が飛び出さないように、指を添えて位置を保ちます。
暫くこの状態で、温度が安定するのを待ちます。「検温中ですよ~、そのままですよ~。」
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暫く沈黙が続きます。
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ピピッと音がして、検温終了を告げます。
さて、何度になっているでしょうか?
スルリと体温計は、肛門から抜き去られます。
肛門の皺がキュ~と窄まり、又元に戻ります。ゼリーが垂れています。
ん~~と、検温結果は、37.8℃ですね。腋下より高めですから、問題無さそうですね~。
婦人科検査の前に、診察ベッドに載せられて、見学者の前で検温される女性患者
「えーっと、深部体温は、37.8℃ですねー。異常有りませんよー。 ではね、次は直腸の内診しておきましょうか。そのままで、もうちょっと辛抱していて下さいね。」
肛門に挿し込まれて温かくなった体温計は、スイッチをオフにされてから、カトレーへ戻されカチャリと音を立てて置かれます。