サージカル・グローブ
- 2018/05/26
- 19:00

患者さんを、内診台へ載せたら、愈々診察の開始となります。安全衛生上、手袋を嵌めなければなりません。患者さん毎、施術事に交換します。サージカル・グローブは、慎重に開封して嵌めます。滅菌済みなので、特に手袋の指先等へは、触れてはいけません。

「さて、それでは診察を始めますね。辛い姿勢になって頂いていますが、暫く、辛抱をお願いします。」そう言うと、ドクターは手袋の入った包みをビリビリと破ります。音に反応して、患者さんのお尻の穴が窄みます。

患者さんにとって、最も嫌な時です。下半身を曝け出し、足元に風を感じながら、これから始まるであろう、気の進まない診察の始の音が聞こえて来ました。
白く輝く無影灯と、その光を反射する白いタイルが、眩しく目に映ります。これが現実なのか、それとも悪い夢でも見ているのか。にわかには判断出来ません。下半身のスースーとする頼りなさが、僅かにこれが現実だという手掛かりになります。

足元から聞こえるビリビリという音に、思わず膝に力が入ります。ベルトはしっかりと締められているので、膝は動かせず、恥ずかしい部分が、ドクターに丸見えになっているかと思うと、逃げ出したい気持ちになります。

局部が目の前に曝されているにも拘らず、ドクターはゆっくりと手術用ゴム手袋を、取り出します。「ええと、レフトとライトですね。ちょっとお待ち下さいね~。」

診察を待つ身には長く感じる一時です。
ドクターは、滅菌済みのラテックス・グローブを取り出し、手に嵌めようとしています。
まるでスポットライトに照らし出されたステージに上がったように、下半身に視線が集まるのを感じます。

パチン、パチンとゴムの伸びて縮む音が足元で聞こえて来ます。股間に風を受けて幾人かが行き交う気配を感じ取ります。どうやら診察室のドアが開いており、足音や会話が遠くに聞こえて来ます。

きつめのサージカル・グローブを、両手に嵌めて、キュキュッと左右の手を組んで、ピッタリとフィットさせます。術中に、指先の触感が伝わるようにしています。

「さてさて、それでは診察を行いましょうかね。」
長い間待たされたような気がする患者さん側ですが、一気に緊張が高まります。膝に力が入り、ベルトがピンと張りました。