looking thoughtfully at the mushroom
- 2018/05/03
- 20:06

いまのじょうたいで立ち上がって、走って逃げたりするのはよさそうに思えません。助けになるものは、なんにも見あたりません。近くに、アリスと同じくらいのせたけのキノコがありました。アリスはその下をのぞいて、両側を見て、うら側も見てみたので、じゃあついでに、てっぺんになにがあるかも見てやろう、と思いつきました。
アリスは、いきおいよく立ち上がろうとしましたが、何故か、お尻が突っ張って立ち上がれないのです。
鬼はうれしそうに、「どうだ、逃げたり出来ないだろう? これが、地下牢の囚人を縛るいい方法なんだよ。おとなしくしなさい。」

鬼はそう言うと、アリスを跪かせます。マスクの下で、にんまりするだけで、じっとアリスを見つめる。不気味な鬼だなあ、と思ったアリス。
しかもほんとに長いツメと、頭からスッポリの頭巾で、どんな顔をしているのかも分からないものだから、下手に出なければという気になってね。
「あの、鬼さん。」とちょっぴりおずおずよびかけてね、だってそのよび方が相手のお気にめすかさっぱりわからなかったから。ところが向こうはさらにちょっとにやっとするだけ。「ふう、とりあえず気げんはいいみたい。」と思ったアリスは言葉を続けてね。「教えてくださいませんこと? これからどうした方がよろしくて?」
「そいつはやっぱりお前の心掛け次第だねえ。」と鬼。
「では、大人しくしていればいいの?……」とアリス。
「そうだねえ、確か、お前さんはキノコを食べて酷い目にあったんだって?」と鬼。
「……ええ、齧ったら大きくなったり、縮んじゃったり、びっくりしたわ」とアリスは体験した事を心の声で、話しました。
「そりゃそにょようになるなああそうなるとも、」と言う鬼、「それは、他に使い方があるんだよ。折角だから、教えてあげようかな。」
アリスはたしかにそうだったのかなあとも思ったので、今度はべつの使い方を訊いてみようと問いかけてね。「それは、本当はどうすればよかったの?」
「よしよし、それじゃああっちの方からキノコを持って来るからな、」とここで鬼は、何処かへ行きました。

しばらくアリスは待たされます。膝は痛いし、床に着けた顔は冷たいし、それに両手首は痛いし、それに何と言っても、お尻が変な感じ。動くとううんとなっちゃうわ。一体どうなっているのかしら?
ドアを間違えて入っただけなのに、どうしてこんな目に合うのかしら?
「待たせたね、アリスちゃんとやらに、似合いのキノコを探してたんだよ。気に入って呉れるといいんだがなあ。
アリスは、そう言われても、身動きが取れずに、キノコを見る事が出来ません。
「背の高さまであるキノコだったけど、それはどんなの? 美味しいの? 痩せるの?」
「だから、お口で食べるんじゃないよ。」

「あんたは未だもの知らずのようだからね。まちがいないよ、さっきお尻を調べたからね」と鬼。
アリスはこの意見の調子がぜんぜん気にいらなかったので、なにかべつの話題にしたほうがいいな、とおもいました。なにか思いつこうとしているあいだ、鬼は、キノコを手にして、「いいかい、アリスちゃん、このキノコは、背丈ほどは大きく無いんだよ。そうだねえ、鍋に入れる普通のキノコよりは、ちょっと大きめかなあ。それでね、不思議な事に、自分でクネクネ動くんだよ。ほら、どっかで会った青虫みたくね。それに、寒いのかブルブル震えるしね。」
鬼は、手にしたキノコに何か言うと、ブーンと音がしました。ブーン、ブーン、ブルブルブルブル

アリスはどうせまた飲んだり齧ったりするキノコが出てくると思ってしばらく様子を見ようと待ったんだけど、どうも口が塞がれてて、飲んだり齧ったり出来ないので、ものの数分するとこれは、本当に違った方法で、キノコをどうにかするのかなあと考えが進み出してね。「キノコの端を齧ると、上と下で、伸びたり縮んだりしたけど、それは経験して見たことあるから、」とひとりごと
「アリスちゃん、このキノコの方がきっともっとずっと面白いはず、でもまあ初めてのようだから、そこまでおかしくはないかも――少なくとも最初は二度目ほどおかしくないかな。」こう口にして鬼は、笑います。
「お仕置きだと言ったよね。間違ってこの地下牢へ入って来た女の子は、お仕置きされるのさ。」と鬼。
「だからお仕置きなんて、結構!!。」と答えるアリス、「あの、そんな簡単にここは、出られないからね。ちょっとひどいめに合って貰わないと、俺様の立場が無いんだよ。」
「そんなの知らないわよ。」というアリス。